本日は東京・日本橋で開催されている福徳塾「商人は、こうして後継者を育てた」を取材させていただきました。
主催はNPO法人江戸しぐさで、講師は副理事長の桐山 勝氏です。
「後継者の能力が経営に向いていない場合、速やかに違う後継者を選び、育成するのが江戸商人」
「そこに血族であるか否かは関係なく、娘婿(むすめむこ)に後継を託(たく)すケースは多い」
その理由としては、まずはお店を残す事こそ第一と言う考えが徹底しており
だからこそ、例え後継者が息子であっても、能力的に適していない場合は、容赦なく任を解いたと言います。
「お店を潰す事こそ、ご先祖さまに申し訳ないと言う考えで、そして、お客さまに迷惑がかかる、
さらには、一緒に働いている従業員の生活を守れないから」
享保時代の豪商「鴻池家」の家訓には、まさに、そのような内容の事柄が、
しっかり書かれているとも付け加えます。
また、江戸時代の経営マニュアルでロングセラーとなった「商人生業鑑(あきんどすぎわいかがみ)」には
「家督断絶は盗人の百倍の罪」と書かれており、
このことからも、後継者選びには特に慎重だった事が窺い知れます。
さらに、越後屋の家訓には「息子は15・16まで奉公人と同様に育てよ」
といった一文も書かれていると桐山氏は説明します。
いただきましたレジュメには、江戸時代の経営秘伝書と言われている「分限玉の礎」が強調する
息子の心得と言う文章がありましたので、紹介していきます。
息子心得
1 遊所は勿論、娘下女の類、淫らがあるべからず
2 物見遊山に行くときも、己より下目のものと同道すべからず
3 手習い算盤よく習ひ、暇あらば素読すべし
4 他商売を心懸くべからず
5 尺八、三味線の類、稽古するとも上手にならぬを上手と心得べし、勝負事。固くすべからず
※解釈に間違いがあるとダメなので、原文のまま紹介しました。
桐山氏は、1についてはパワーハラスメントを行なわない、5は、習い事はほどほどにすると解説します。
余談ではありますが、江戸時代の豪商に共通しているのが、
高利を取らないと言う理念が存在するとも語ります。
「売ると言う旧漢字は『賣』と書く。『買う』と言う漢字の上に『十』と『一』が乗っかっている」
「これは『十』で仕入れた商品を販売する際には『一』の粗利を足して『十一』としていた」
「だから、江戸時代の粗利は、販売価格の10~15%程度だった」と。
うぅ~ん。やはり、江戸商人の考えや行動は面白い。
では。