理容師カフェ‐小さな理容室の販促物語‐

家族経営の理容室が日々、行なっているちょっとした宣伝事例を情報共有します。

小説 組織改革物語22話 選挙

この物語は、著者のご好意によりRIKEI(理美容教育出版社発刊)2003年9月号から11月号にて掲載した原稿を、当ブログに転載させていただきました。毎週金曜日にアップしていきます。

理容組合は生まれ変われるのか、改革を目指した男たちの記録

著 吉田裕幸HIRO・YOSHIDA(OFFICE・HIRO主宰 )
全理連業界振興論文最優秀賞受賞

主な登場人物
杉山稔(副理事長・企画室長)
藤川慎一郎(助講師・企画委員)
鈴木健志(県青年部長・企画委員)
中村雅夫(企画委員・元県常務理事)
竹中敏夫(理事長)
山崎光輝(弁護士、吉川の友人)
佐藤隆(組合事務局長)


十二月初旬、各委員会から答申書が提出された。

支部規約は、県組合定款に準じた数十ページにもなる立派なものになっていた。

事務局の佐藤が纏め上げたものだった。

役員選挙については、検討委員会の意向が充分に盛り込まれ、詳細な手順が記されていた。

支部合併の方は、地域性を考慮しながら段階的に進めるという、穏やかな内容だった。

答申書をもとに、新体制の骨格作りが始まった。

久しぶりに企画委員会が招集され、役員選挙の手順確認が行われた。

「告示は全地区同時に行われるんですね」

鈴木が尋ねた。

「来週末に、全組合員に文書が配布されることになっているよ。

一部郵送のところもあるけどね。

その後で、選挙に関する地区の役員総会が開かれるんだ」

中村は各支部選挙管理委員会に、支部長選挙に関する手引書を提出していた。

告示、立候補届、選挙公報、選挙、開票といった一連の作業手順を記したものだった。

「今のところ立候補に向けた動きは無いようだけど。理事長は何か聞いていますか」

「正式には何も聞いていないな。

ただ水面下では、何人かが運動しているという噂は入っているよ」

藤川は一抹の不安を感じながらも、ニューリーダー誕生に期待していた。

「立候補者が多くて困った、というような事態になればうれしいんですけどね」

東地区役員総会の日、鈴木が選挙についての説明に出向いた。

組合員であれば誰でも立候補できることや、選挙の必要性を分かりやすい言葉で話した。

一通りの説明が終わり席に着くと、一人の役員が手を挙げた。

「改革初年度の大事な時期に、経験の浅いリーダーでは困ります」

隣の役員も続けた。

「現在の支部長から選んではどうですか」

「賛成だ。何も知らない一般組合員が、新しい支部長になったら大変じゃないか」

会場がざわめいた。

「それじゃ選挙の意味が無いよ」

そんな声も聞こえたが、拍手と歓声にかき消されてしまった。

つづく


第二十三話 互選
http://blogs.yahoo.co.jp/eroisamurai/37904340.html?type=folderlist