理容師カフェ‐小さな理容室の販促物語‐

家族経営の理容室が日々、行なっているちょっとした宣伝事例を情報共有します。

組織改革物語 第一話 開始

この物語は、著者のご好意によりRIKEI(理美容教育出版社発刊)2003年9月号から11月号にて掲載した原稿を、当ブログに転載させていただきました。毎週金曜日にアップしていきます。


理容組合は生まれ変われるのか、改革を目指した男たちの記録

著 吉田裕幸HIRO・YOSHIDA(OFFICE・HIRO主宰 )
全理連業界振興論文最優秀賞受賞

主な登場人物
杉山稔(副理事長・企画室長)
藤川慎一郎(助講師・企画委員)
鈴木健志(県青年部長・企画委員)
中村雅夫(企画委員・元県常務理事)
竹中敏夫(理事長)
山崎光輝(弁護士、吉川の友人)
佐藤隆(組合事務局長)


平成12年8月の初旬、組合事務局会議室で定例企画委員会が開かれていた。

メンバーは杉山、藤川、鈴木、中村の4人。

副理事長を兼任する杉山は忙しく、いつも突然の召集だった。

人気講師の藤川も、休日はほとんど出講している。

青年部長鈴木にいたっては、周りが体を心配するほど東奔西走の毎日だった。

今年役員を退いた中村は、環境NGOとして講演や執筆活動に忙殺されていた。

しかしこれまでの委員会には、誰一人遅刻も欠席も無かった。

皆この仕事が好きだった。

次年度の事業計画案も出揃い雑談に入った頃、

トレードマークの扇子を使いながら竹中敏夫理事長が姿を現した。

久しぶりのお目見えではあったが、挨拶もせずにいきなり話し始めた。

『今のままじゃ、組合はおろか理容業界も行き詰まりだよ』

いつもと様子が違う。

皆そう感じた。

『低料金店も増えているし、デフレ不況はますます出口が見えなくなってきたな。

理容業界全体の売上は二十パーセントも落ち込んでいるそうじゃないか。

免許制度だって、どうなるか予断は許さないよ。まさに万事休すだ。

こんな時代だからこそ、求心力があってしっかりと機能する組織が必要なはずじゃないのか。

ところが、この一年で組合員が二千人以上も減っているんだ。

小さな組合なら二つほどが、まるまる無くなったようなものさ。

なぜそうなったかは、君たちが一番よく知っているよな。

今の組合は社会の流れに、完全に取り残されている。

時代性というものを全く反映していないんだ。

だから組合員が何を求めているか、全く見えていない。

これじゃ、せっかくの組合も、魅力が無くなるよな。

組合を必要としない人が増えてきても当然さ。そうだろみんな。』

それは分かっている。

でも一地方の組合役員になにができると言うのだ。

皆、言葉には出さなかったが、同じ事を思っていた。


つづく


第二話 沈黙
http://blogs.yahoo.co.jp/eroisamurai/26516733.html