理容師カフェ‐小さな理容室の販促物語‐

家族経営の理容室が日々、行なっているちょっとした宣伝事例を情報共有します。

コロナ禍でも営業継続。ひとり美容室の経営者が語る理由とは。被災地ボランティア活動から学んだ医療従事者に対する、理美容師の後方支援

 

 

f:id:ribiyomp:20200430171944p:plain神奈川・川崎市ヘアーコミュニティー ティートゥリースターは店主の柴 真樹さんが営む、ひとり美容室。小田急小田原線百合ヶ丘駅新百合ヶ丘駅生田駅の中間に位置する、地域密着系ヘアサロン。各最寄り駅までは公共交通機関のバスや自動車を利用して、一山越える立地となる。多くの理容室や美容室がコロナ禍で先行きが不透明な、この時期。同店では過去最高の新規客数を記録していると言うので、さっそく理由などを聞いてみた。

―――緊急事態宣言が発令され約3週間が過ぎました。貴店の現状はいかがですか?

4月24日(金)までの2週間は3~4割ほど、お客さまが減りました。ですが、お陰様で25日(土)からは、いつも通りの忙しさに。 同時にゴールデンウイークまで予約で一杯になりました。

 

―――客足が戻り、通常通りも落ち着きを取り戻しつつある感じですね

 店頭の人通りは、緊急事態宣言前と比べて多くなっています。都心に人口が流れない分、郊外でクラスター(密集)状態となる典型例かと。

 

―――なんか危ない気がしますが

 えぇ。ですから例えば当店ではコロナ対策として、予約客を重ねないように対応しています。顧客が常に一人だけと言う接客状況です。今までも、今からも本当に用心しないと怖い気がします。

  

―――そのような状況下、新規客が増えてきたと聞きました

 はい。当店は、今の場所で美容室を始めて16年経ちます。今、過去最高の新規客の来店数となって

います。 理由は、すぐ近所にある大学病院です。感染病指定病院で、 院内感染ではなく看護師、受付の方などの感染者を出してます。

 

―――医療従事者の方々には、本当に感謝しかありません

 その通り。医療従事者の方々が大変なことは、地域住民のみなさん知っています。そのためにもこれ以上の感染拡大は何としても防がないと。

 

―――確かに。で、大学病院と新規客数が伸びている関係は?

 当店の近隣の方は、自動車を利用しない場合、公共交通機関のバスで最寄り駅まで移動します。そのバスが大学病院の発着なのです。つまり、外来患者が最寄り駅からバスを利用して大学病院に行く確率が高くなります。これ以上、医療従事者が大変にならないよう、地域住民はバスの利用を避けながら、感染拡大防止に協力しているのです。

 

―――なるほど

 そのようなことからも、今は商圏内の人の流れが変化しています。今までバスに乗り、駅付近の大型美容室を利用していた方が、バスを利用しなくなりました。必然的にバスに乗らなくても行ける、近隣の美容室を探すようになります。結果、当店にご来店される状況が増えているのです。

 

―――新規のお客さまが来店するまで、大まかな流れなどは判明していますか?

 店先を通りかかった際、置き看板に目が留まります。ご自由に持ち帰れる販促物を用意しており、気になった見込み客が手にして帰られます。その後、当店のホームページを見て、ブログを読まれ気に入られれば予約される流れです。特にブログは読まれる確率がかなり高い。

 

―――店頭販促。ウエブ(特にブログ)情報発信が今まで以上に重要なんですね

 当店の場合、そうなります。また、このような状況だからでしょうか。大型美容室はスタッフが多く、人が集まる場所(美容室)。だから、行きたくないと言う理由から、当店に来店される新規客もいます。

 

―――大型美容室を避けたいと言うキーワードは、宣伝文句として活用できるかも

 ただ正直言うと、今営業続けるのはかなりリスクが高いと思う。 万が一、自分の店からクラスター感染を引き起こせば、立ち直すのはかなり困難に。当店の立地は今は追い風だとしても、当店からコロナ感染を出せば年単位で地域の噂になります。潰れる可能性は大。 すごく怖いです。

 

―――怖い。物凄く。でもなぜ営業を続けるのですか?

 自粛要請うんぬんの前に、私は単純にお客さまの予約が入らなくなった段階で、休業しようと思っていました。しかし、緊急事態宣言が発令された後でも、減ったとはいえ予約が入ります。緊急事態宣言が発令された火曜日。当店は休みでしたが、ネット予約が3件ありました。その時、お客さまの生活には今、美容室が必要であると判断。営業を継続する意思を固めました。

 

―――なるほど

 当店は大学病院が近いため、医療従事者の顧客も多くいます。コロナ騒動の今。厳しい環境下で仕事に取り組んでいる医療従事者。髪が伸びて白髪が目立ち、本音は仕事したくない気分なのに。だからこそ、医療従事者の顧客たちの髪が綺麗になり、喜んでいただける事こそが、私たち理美容師の仕事のやりがいだと思っています。理美容師が行なう医療従事者への後方支援の必要性については、これまでの被災地ボランティアを通じて学んだことでもあるのです。

 

―――理美容室の市場の変化。そして、混乱期の理美容室のあり方など具体的な事例を踏まえ教えていただき、ありがとうございます。今後、また何か新発見などがありましたら、みんなとの情報共有にご協力頂ければ助かります


【取材後記】

今回、色々教えてくれた柴さんですが、私は事あるごとに「日本一、理容師っぽい美容師」と表現しています。不定期に開催している理容師・美容師ぶらり昼酒大会では、鶯谷や野毛、池袋など、まぁオシャレ美容師には縁遠い地域でグイグイ酔っぱらっている柴さん(あ。私もです)。居酒屋に入り気が付けば、いつも初対面の隣席の方々と大盛り上がりする柴さんの人たらし展開から、相手の懐にスッと入り込める天性の才能の持ち主と理解しています。だからこそ、実は人の機微に敏感。日々、柴さんの美容室に来店される医療従事者の顧客たち。その表情から瞬時に、心の奥底にある精神的な疲れをくみ取り、理美容師の施術によってストレスを解消していることは想像に容易いです。コロナ騒動でも営業を継続する理由を知った時「あぁ。柴さんらしいな。実に」と、思ったのが正直なところ。理美容師の社会的な意義を再認識出来た取材でした。ありがとうございます。

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【この記事を書いた変な理容師の紹介】
關口和彦(せきぐち・かずひこ)。厚生労働大臣認定 管理理容師。でも理容室経営してません。中央理美容専門学校 基礎科・高等専門科・大学科卒業後、都内の理容室勤務を経て理美容教育出版株式会社入社。理美容業界誌編集を約16年行ない、独立。雑誌編集感覚で小さな理容室の紙チラシを作ったり、理容室向け経営講習会 理容師カフェ 開催を通じて繁盛理容室の成功実例を共有。時々「理容室の成功事例を話せ」と振られると 紙チラシ集客の効果が平均値7倍を達成している一連を紹介しています。また、最近は理美容専門学校の機関誌編集も担当。2018年に立ち上げた 髪の専門医師と理容師の協業展開 では理容室と病院が連動。男女問わず薄毛のお悩み解消に取り組む。提携中の薄毛治療クリニックで処方されている育毛・美肌 医療サプリメント ハエル 取り扱い中。47歳。東京・練馬区在中。「理容師カフェ」で検索されれば過去の取り組みが表示されると思いますので、詳しくはソチラで。