理容師カフェ‐小さな理容室の販促物語‐

家族経営の理容室が日々、行なっているちょっとした宣伝事例を情報共有します。

床屋の息子の思い出

学校から帰ると、両親が忙しくお客さんの髪を切っている。

チョキチョキチョキ

店から入ってはいけないとは思いつつ、やっぱ入ってしまう。


厚生省(当時)勤務の役人で、髪の毛が薄いオッチャンがクロスを巻かれて、オヤジと何か喋っている。

どうせ、他愛もない事なんだろうと思いつつ、店の奥にある家に繋がるドアをあけ、ランドセルを置くと

テレビのワイドショーを見ている婆ちゃんの後姿が目に入る。


「あーお帰り」振り向きつつ、テーブルに手をつきながら立ち上がろうとする婆ちゃん。

「オーロン茶飲むか?」と聞かれ、

心の中で「だーかーらー、オーロン茶でなくてウーロン茶だって」と突っ込むオイラ。

「いらねー」と愛想なく答えて、勝手にテレビのチャンネルをガチャガチャと変える。

今思うと、自分勝手極まりない行動なのだが、婆ちゃんは文句ひとつ言わない。


「なんか、つまんねー」

当時のオイラを見たら、誰でも説教をしたくなる状況。


で、婆ちゃんが店と家の境界線であるドアについているマジックミラーを見つつ

「店に道具屋さん来たよ~」と教えてくれると、なんだかソワソワするオイラ。


しばらくすると…、オヤジからの注文を受けた道具屋さんがドアを開け

「いるんだったら、行くかぁ~?」と聞いてくる。

答える間もなく、靴を履いているオイラ。


小学生の頃、道具屋さんの営業車に乗り色んな所に連れて行ってもらえるのが楽しかった。

確か、ハイエースのような大きな車。

後部座席には行かないと言う約束で助手席に乗り、

道具屋さんの取引先の理容店に付くと、オイラは助手席で待っている。


しばらくすると次の取引先へと移動。

そんな繰り返しで、最後は自宅まで送ってもらう。


「ありがとー、おじちゃん」

「またな」

無愛想な、おじちゃんだったけど、物凄く楽しい思い出。


「あの、おじちゃんにはな、昔、おじいちゃんが死んだあとに、職人さんを手配してくれたりしたんだよ」

家に帰ると、婆ちゃんが夕飯を作りながら、そんな話をしてくれた。

オヤジとお袋は、忙しそうに仕事をしており、妹と婆さんと3人で夕飯。

「今日、おじちゃんと行った所はね…」


そんな話で盛り上がった事を、なぜか今、思い出しました。


三丁目の夕日、理容一家バージョンでした。