理容師カフェ‐小さな理容室の販促物語‐

家族経営の理容室が日々、行なっているちょっとした宣伝事例を情報共有します。

世界大会

1992年。

千葉・幕張で開催された世界理美容選手権大会で、

理容学校の学生だったオイラは、第三競技のカットモデルを行なっていた。

確か、フリースタイルだったと思う。

選手とモデルは大会前日に初めて顔を合わせ、大急ぎで仕込みを行ない本番を迎えた。


オイラを担当する事になったのは、フィンランドの代表選手(だったと思う)。

ロッテのバレンタイン監督に似ているダンディな方だった。

フィンランドの選手(以下、バレンタイン)とは当然初対面。

しかも外国の方。もちろん、言葉は通じない。

誰でも不安になると思うのだが、スキンシップやゼスチャーなどを交えて、

バレンタインは積極的にコミュニケーションを取ってくれた。

お陰で緊張していたオイラも、すっかりリラックスでき、翌日の大会本番を迎える頃には、

バレンタインに対する信頼が生まれていた。


仕込みのヘアカラーなどが行なわれている時、バレンタインの仕事を見ていると、ある事に気が付く。

一つの事を行なう際、後片づけも同時にこなしている。

だから、道具などがゴチャゴチャになる事はなく、学生のオイラでも、

どこに・何があるのかが、一目瞭然であった。

これらはバレンタインの几帳面な性格なのか、

それとも、無駄な時間を極力少なくすると言う知恵と工夫の賜物なのか不明だが、

当時のオイラは「なるほど。一国を代表してくる選手ともなれば、

常日頃から整理整頓を心掛けているのか」と感銘を受けた。


今になって思うのは、やはりバレンタインは一流のヘアスタイリストであったと言う事だ。

カウンセリングなんて言葉が定着していなかった理美容業界だが、

バレンタインは見事に実践していており、また、ムダな時間を極力少なくすると言う姿勢など、

見習うべき所は多々あった。


コンテスト離れが加速度的に進んでいる理容業界だが、

それは出場選手の気の持ちようではないだろうか。

また、テクニック以外にも学べる事が多々存在するように思えてならない。

そう。バレンタインのように。


ふと、そんな事が脳裏をよぎった。

では。