理容師カフェ‐小さな理容室の販促物語‐

家族経営の理容室が日々、行なっているちょっとした宣伝事例を情報共有します。

組織改革物語 第七話 迫力

この物語は、著者のご好意によりRIKEI(理美容教育出版社発刊)2003年9月号から11月号にて掲載した原稿を、当ブログに転載させていただきました。毎週金曜日にアップしていきます。

理容組合は生まれ変われるのか、改革を目指した男たちの記録

著 吉田裕幸HIRO・YOSHIDA(OFFICE・HIRO主宰 )
全理連業界振興論文最優秀賞受賞

主な登場人物
杉山稔(副理事長・企画室長)
藤川慎一郎(助講師・企画委員)
鈴木健志(県青年部長・企画委員)
中村雅夫(企画委員・元県常務理事)
竹中敏夫(理事長)
山崎光輝(弁護士、吉川の友人)
佐藤隆(組合事務局長)


一通りの説明が終わると、ひとりの理事が手を挙げた。

『今更そんなことして、どんなメリットがあるのですか。

今まで通りで、何か不都合があったのでしょうか』

『組合員から不満の声が出ているわけじゃないんでしょう。

それに、こんな重要な案件を、理事会にもかけないで進めようとするなんてどうかと思います』

隣の古参理事も続いた。

改革案の策定着手と基本方針は、すでに十月の理事会で発表している。

この発言は改革反対の意思表示なのか。

出端をくじかれてしまった。

杉山はほおーっと小さくため息をついた。

すると若手の理事が発言を求めた。

『改革は必要です。組織のための組織では、組合員は減る一方です。

やはり、組合員がメリットを感じるような、新しい組織に変わらないといけないと思います』

大見得を切った。

彼は早い段階から、改革への理解と協力を表明していた。

数少ない改革推進派の一人だ。

その後はもう誰も手を挙げなかった。

理事長の竹中は、腕組みをしながらやり取りに耳を傾けていた。

そして言った。

『この問題は私がお願いをして、全て杉山君に任せてあるんです。

皆いろんな思いがあるだろうけど、組合員のためにもしっかりと議論して下さい』

有無をも言わさぬいつもの迫力は無いが、改革にかける決意が伝わった。

けっして強制はしない。

ただ理事の気持ちがひとつになることを望んでいる。

杉山にはそう聞こえた。

結局この問題は支部役員会で検討して、翌月の理事会で報告することになった。


つづく


第八話 動揺
http://blogs.yahoo.co.jp/eroisamurai/31064958.html?type=folderlist