「ドライヤー」
理容学校では演習と言う授業があった。
まぁ、今現在でもあるとは思うのだが、
要は校内にあるヘアサロンで、来店されたお客さまのカットを学生たちが行なう授業。
勿論、学生がカットしたあとは
担当教諭が修正を加え、虎刈りで終わる事はない。
利益追求が目的ではないため、料金は安価。
そのため、近隣の大学生などが多く来店され、私も下手くそながら
演習の授業ではカットを行なっていた。
この演習室は、確か20台ほどの理容椅子があり
バックヤードには椅子一台ごとの電源スイッチがあった。
NO1というシールが貼ってある電源のスイッチをOFFにすることで
椅子番号NO1の電源が切れる、という感じ。
そこで、あることを思いつく。
バックヤードから、施術スペースは見れるので
友達がドライヤーを使用して
お客さまのスタイリングを行なっている際、スイッチをOFFにするのだ。
すると当然、その友人が使っているドライヤーは動かなくなる。
友人「あれ、なんだろう?」と言いながらドライヤーを見る。
すると、すかさずスイッチをONにする私。
ブオォォォ~ンと動き出すドライヤーを片手に
またスタイリングに戻る友人。
が、お客さまの髪にドライヤーの熱が当たる瞬間
またまた電源のスイッチをOFFに。
首を傾げながら、再びドライヤーを叩く友人。
もちろん、すかさずスイッチON。
ブオォォォ~ンと元気良く熱風を発するドライヤー君。
再度、スタイリングに入る友人。
そこで、スイッチOFF。
ここまで来ると、お客さまも笑っている。
「なんか変ですよねぇ」などとお客さまに話し掛ける友人。
すかさずスイッチON。
ブオォォォォン~とドライヤー君。
「あっ、動いた動いた!」と大喜びする友人とお客さん。
で、髪にあてるとスイッチOFF。
友人とお客さんがドライヤーを見た瞬間、スイッチON。
で、友人の手が少し動くとスイッチOFF。
ここで友人は、隣のクラスメイトにドライヤーを借りる交渉を始める。
だが、借りたドライヤーでスタイリングを行なった瞬間、スイッチOFF。
ドライヤーを見ると、スイッチON。
もう、ここまで来ると、お客さんは大爆笑。
友人が、一歩動く度にスイッチがOFFになったりONになったりする。
諦めかけた仕草をすると、ちょっとの間、スイッチON。
半信半疑でドライヤーを凝視する友人。
そーっと、ドライヤーが揺れないように姿勢を保ちながら
スケルトンブラシを手に取った瞬間、スイッチOFF。
ここで、周囲のクラスメイトがバックヤードの私と
友人を半笑いで見ており、見事にバレてしまった。
こんな事ばかり行なってた理容学校時代。
良い子の理容学校生は、絶対にマネをしないように。。。