理容師カフェ‐小さな理容室の販促物語‐

家族経営の理容室が日々、行なっているちょっとした宣伝事例を情報共有します。

小説 組織改革物語12話 責任

この物語は、著者のご好意によりRIKEI(理美容教育出版社発刊)2003年9月号から11月号にて掲載した原稿を、当ブログに転載させていただきました。毎週金曜日にアップしていきます。

理容組合は生まれ変われるのか、改革を目指した男たちの記録

著 吉田裕幸HIRO・YOSHIDA(OFFICE・HIRO主宰 )
全理連業界振興論文最優秀賞受賞

主な登場人物
杉山稔(副理事長・企画室長)
藤川慎一郎(助講師・企画委員)
鈴木健志(県青年部長・企画委員)
中村雅夫(企画委員・元県常務理事)
竹中敏夫(理事長)
山崎光輝(弁護士、吉川の友人)
佐藤隆(組合事務局長)

『第七号議案その他の件、機構改革案について質問がなければ採決を行います』

議長がやや声高な調子で言うと、総代の一人が手を挙げた。

『そのような話は、聞いたことがありません。支部の再編成とはどういうことですか。

いつどこで決めたのですか』

小さな支部の役員だ。

理事経験もあるベテラン役員だ。

続いて手が挙がった。

『なぜ改革が必要なのですか。メリットは何ですか』

支部員に何の相談も無く、そんなことが決められるのですか』

次々に手が挙がった。会場は騒然となった。

『そうだそうだ。勝手にそんなことが決められるわけが無い。ふざけるな』

まるで総会屋のヤジのような発言も飛び出してきた。

議長は立ち上がって、事態の収拾に必死になった。

『静粛にお願いします。不規則発言はおやめ下さい。従わないときは退席して頂きます』

役員席の理事たちは、なすすべも無く呆然としている。

最初に手を挙げた総代が、再度発言を求めた。

『理事長の提案理由の中で、各支部内での認知も進み、とありました。

一部役員はご存知かもしれませんが、私ども平役員は始めて伺いました。

提案理由が事実と違います。審議に応ずることは出来ません』

会場を見回しながら、しっかりとした言葉で語った。

説得力があった。

『そうだ。その通り』

再び声が上がった。

中村は、拳を握り締めて立ち上がった。

『何を言っているんだ。どうしたというんだ』

支部で充分議論を尽くしたじゃないか。

支部長が理事会で報告しているぞ。俺が説明してやる』

鈴木は血相を変えて、総代用の会場マイクを取りに走ろうとした。

『待て。君は総代じゃないんだ。発言権は無い。落ち着くんだ』

会場整備の古参役員が、後ろから鈴木を羽交い絞めにした。

『放して下さい。こんなことがあるわけが無い。話せば分かります』

藤川が鈴木の手をとった。

『総代が悪いんじゃない。責任は全て僕たちにあるんだ。もう少し様子を見よう』

つづく


第十三話 挫折(ざせつ)
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